「言ったでしょ? 泊まるって言っても別に二人っきりってわけじゃないんだし、部活なんだし、そこまで怒られるようなことじゃないと思うんだけどっ!」

あーあ。
拳を握りしめて。
言っちゃったよ、私。

だけど彼はそれでも無言。

いつものクールな表情のまま、私に向けていた視線を再び手元の参考書へ戻した。


──そして、気まずい沈黙が続く。


一方の私は、こういう雰囲気が大の苦手。

いつだってそうだ。

私ってこんな時、いつも「何か言わないといけない!」って気分になって、しどろもどろになりながら、さらに自分の首を絞める発言を続けてしまうんだ。


「それに、滝田先生の送別会なんだから、行かない方が失礼って言うか……慎のこと、意識して避けてるって思われても困るって言うか……」



──パタン。


黙って私の話を聞いていた彼が、参考書を閉じた。


あれ?

なんかやばい?