ケータイ小説 野いちご

君を探して

私は薄暗い部室に1人取り残された。

ゆっくりと、疲れて重い体を動かし、倒れた椅子を起こして腰かける。

人がいなくなった部室に一気に冷たい空気が入り込んで、私の頭を冷やしてくれた。


「ふぅ……」


目を閉じても、さっきの陽人の姿が目に焼きついて離れない。


私は、陽人やヤマタロには慎とうまくいっていないことを話していなかった。

……だって、きっかけが本人たちにあるなんて言いにくかったし。
4人でいるときはいつも楽しく笑っていたかったし。

2人には、気づかれたくなかったんだ。


だけどまさか陽人が部室にまで乗り込んでくるなんて。

しかも、慎に手を上げるなんて。


陽人は確かに熱くなりやすいけど、決して暴力的なヤツじゃない。

陽人のあんな姿を見たのは今回が初めてだった。


それだけ、慎のことが許せなかったんだよね……。


陽人に対して、
「あんな騒ぎを起こしてくれて、どうしてくれるのよ!」
という腹立ちもあったけれど、それ以上に驚きと……感謝の気持ちもあった。

小さなころからそうだ。
陽人はいつも、私を守ってくれる。
助けてくれる。

私は思わずクスっと笑ってしまった。

「まったくもう、単細胞なヤツ!」


帰ったら「やりすぎだよ!」って怒ってやりたいけれど、きっと今頃陽人はひどく落ち込んでいるだろう。


……今頃、ヤマタロがフォローしてくれているんだろうか。

落ち込む陽人とそれを慰めるヤマタロの様子を想像しながら、私は部室をあとにした。


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