背中で扉が閉まる音を聞いて、全身から力が抜ける。

キ…、ちゅーされたんだよね?

そっと唇に指を添える。
ただの唇のようだ。

窓ガラスに映った自分の顔を見る。
目が彷徨っていた。
ただの屍のようだ。


ちゅーされたことに実感がありすぎて実感がない。
意味わからない?
ゴメン、私もワケわからない。

おぼつかない足取りで駅までの道を進む。

光るものがあった。

少年の走っていった道にそれは見えた。
「………」
近づいて見ると銀色の何かが、穏やかな陽射しを浴びてキラキラ輝いている。

これってあの少年の…

「鍵………?」