昨日わたしは、いったっけ。
新しい口紅が、欲しいんだ、と。
自分から、いったんだっけ。
春色の口紅が欲しいんだって。



わたしから進んで、牢獄にはいったっけ。


あの口紅がなくても、春は風の中に。


光の中に。


ふりかえる。



わたしが欲しいのは、春色の口紅でもない。

『家族』を守る仮面でもない。






ふ、と。









自分のからだ、すみずみまで、







春の持つ湿り気と希望と豊かさに、包んでみたくて。




【END】