「いいよ。シャワーとかも適当に使っていいから」
「…ありがとう」
俺の言葉に嬉しそうに微笑む莉奈をその場に残して寝室を出た後、リビングの奥にあるクローゼットへ向かった。
ホストという仕事を続ける俺は女に優しくする事など慣れていた。
嘘の優しい言葉ならいくらでも簡単に口にする事が出来た。
でもその全ては琉依として…一人のホストとして出来た事だったのかもしれない。
本当の優しさも知らないし愛なんてものも知らない…
“ありがとう”なんて言葉…俺は遥か昔に忘れていた。
単なる同情なんかでは無く…俺は莉奈の純粋さがただ羨ましかった。
でもこの時の俺は本当の莉奈を知ろうともせずに…見た目だけで判断していたのは俺も同じだった。