僕たちがいるビルには誰もいない。


ビルの屋上。いつ崩れるかも分からないほど危ない場所で、ティーは灰色の布――風景と同化できる細工をして、獲物を待っていた。


今はスナイパースタイル。


ライフルのスコープをじっと見つめて、一ミリたりとも動かない。


こうして一時間は待っている。情報では三十分前には獲物はここを通るはずなのだけど……来ないなー。


ティーはそれでも動かなかった。時間なんか忘れているかのように。


黙っていれば、一日中こうしていそうだ。


神経の糸が切れないかが心配だ。


そうしている内に、鼻にある匂いが漂った。


血の匂い。


そうして耳には足音。獣だからこそ人間より先に分かったことだ。


ヴーと短くないて、その人物が来たことをティーに伝える。