暗くなり帰ろうとした。花時計の横を通り過ぎると白衣を着ている…前田先生がいた。






「前田先生!」






そのままフラフラと裏山の森の中へ入って行く…。追いかけるも見失う。





息が切れる。
足元にメガネが落ちていた。






「前田先生のメガネかな?…。」






ふと気がつくと奥に人影。






「前田先生?…。どうしたんですかこんなところで?」






反応がなく肩に手をかけた。何かがおかしい。






「前田…先生…?」






体に何かが光て巻き付いて…。手を放して離れた。後退りしていくと雲間から月の光が照らしだす。






「キャアー!!!」






前田先生はミイラになっていた。ガクンと足の力が抜ける。力が入らない。動くに動けず…。ただ目を反らすことしかできなかった。それが精一杯。







がさがさ…。






「誰?」体はびくんと跳ねた。






「あら、坂木さん!」






「赤木さん…。先生が…。」
震えて指差し。






「あんまりおいしそうなんでここで食べちゃった。」






「えっ…。」頭で警告がなる動けと命令している。





「アナタもいい感じにほいほいついて来て、予想通り当分お腹を空かせなくてすみそう。」






「赤木さん…。アナタいったい何言って。」






ざわざわ…。森の葉が揺れ回りの空気が冷たくなる。夏に似つかわしくない、甘ったるい香りが立ち込める。






爪が鋭く伸び、瞳孔がカッ!と開く。紅く光瞳、耳がとがり、赤毛は更に紅くなり…。牙が見えた。






「キャアァァ!!」






悲鳴が響き渡る。
冷酷な目がさゆりを捉えている。さゆりは気を失った。






「クスっ…。」






ニヤリと笑う彼女は人ではない。異形のもの…。