「ん、しかし何故190なんですか?180以上、とかの方が言われそうですけど。」
「あぁ、いえ。情報提供をしてくれた目撃者の中に185cmの方がいらっしゃいましてね。すれ違った時に自分よりも背が高かったそうです」
「なるほど」
答えて、珈琲(おかわり)を啜る。

水貴…、はあり得ない。身長的に。160ないかもしれない。
津坂は、180未満ぐらいだったと思うし。
悔しながら私は150ほどしかない。

「ひょっとすると女性かもしれませんけどねェ」
「なくはないでしょうね…」

「あぁ、それと」
「?」
「犯人は土足で上がったようです。絨毯に土や砂がついていましたからね。一応、ご遺族ということでこれも報告しておきます」
「…………」
人ん家に土足で入り込むなよ…。

ご遺族ということで報告しておきます、ってことは、ここまでは教えるけど、それ以上は教えてくれないということか。

同時に、深く首を突っ込むなという牽制も含まれてそう…というのは気づいたけど気付いてない振りしとこう。気付いてないよ何のことかよくわからないなぁははは。

…しかし。
「………ふむ」
家は窓もドアも壊された跡は無かった。
ピッキングしたかは不明だけれども。
私の家は玄関の鍵を開けっ放しにしたり無用心なことはしない。
鍵を壊さないように家に侵入するなら、中の人に開けてもらうしかない。
となると。
鈴原秋人/綾美夫妻に招き入れてもらった…?
しかも土足で。

――そうなると。
顔見知りの可能性が高くなる。
「………。」


時計にちらりと目線を向けて、渡貫さんは言った。
「では、そろそろお暇しましょうか」

「えぇ、お互いに親密度も増したことですし」
上辺だけの笑顔でセリフを棒読みしてみた。

「先程も言った通り、この写真は預からせてもらいます。」
「はいどーぞ」

「他にも何かあったらすぐに警察を頼って下さい。いいですね?」
「はい勿論」
「何かあったらす・ぐ・に警察を頼って下さいね?」
「…はい勿論」←極上の笑み

大事な事なので二回言われました。
…違うか。
信用がないので二回言われました。