スーツのポケットの中で目障りなくらい何度も震えている携帯に気付いて目を覚ました。





たった数時間寝ている間にも客からのメールが数件貯まっていた。





重い体を起こしながら携帯を片手に持ちもう片方の手で軽く髪型を整えた。






その後、クローゼットの中に並ぶ大量のスーツの中から真新しい黒のスーツを選びそれに着替えた。





煙草に火を点けながらポケットから車の鍵を取り出して、マンションの駐車場にある自分の車のエンジンを掛けた。






照り付ける眩しい夕陽とは真逆に俺はこれから始まる長い一日にただ嫌気がさしていた。






車を走らせるに連れて人通りの多い賑やかな街から寂しさを漂わせる寒色系のネオンが煌めく夜の街へと変わっていく。





夜の世界に住み慣れた人間は昼の世界や街に出向く事はほとんど無くなる。






いつしか昼の街はこうして車の中から眺めるだけの単なる風景となっていた。