そのとたん、周囲にいた人びとの視線が一斉にこちらに向かう。

えっっ!?な、何!?何!?

その異様な光景にたじろぎ、驚き過ぎて思わず伊織の方に一歩体を寄せる。
そんな私に伊織は顔色を変えずに言った。


「気にするな」
「無理だよね!?」


間髪いれずに突っ込んだ私に構わずスタスタと校門に向かって歩き出す。
気にするなと言う方が無理がある。
こんなに注目されるなんて今までなかったのだから。
しかし、その注目の理由もすぐにわかった。


『伊織様だぁ。朝から見れてラッキー』
『雨宮先輩よ。今日も素敵ね』
『誰よあの女。伊織様の何!?』
『伊織君の隣を歩くなんてっ! 何なの!?』


……皆さん。聞こえていますよ。
お嬢様たちの私への視線がめちゃくちゃ痛い。
この注目の原因は伊織にあった。
人気があるとは聞いていたけど、車降りただけでこんなに見られるほどだなんて。

うぅ、怖いなぁ。

私は身を縮こませながら伊織と共に校門をくぐった。