ジンジャエールは甘口と辛口の2つの種類がある。

バイトを始めてから知ったことだ。

グラスに氷を入れると、栓を抜いたジンジャエールを注いだ。

フツフツと立てる炭酸は一瞬あふれたと思ったらすぐに消えた。

「お願いします」

「はい」

他のバイト仲間にジンジャエールを任せると、千広はカウンターのうえで頭を抱えた。

何としても籍を外してもらわなければ。

これから誰かと結婚する予定はないが、どうしても籍を外してもらわなければ。

何としてでも外してもらわなければ。

――チリリン

店のドアに備えてあるベルが鳴った。

客がきた合図だ。

「いらっしゃい…」

入ってきたその人物に、千広は呼びかけた声を止めた。