着物を着たまま、リビングの床にへたりこむ私に父は事情を説明してくれた。


『何で……私なの?』
『お前を入れる予定ではなかった。しかし、雨宮先輩はお父さんに娘がいたことを知っていたからね。しらばっくれることが出来なかったんだよ』
『変だよ。だってあんだけの御曹司だよ?もっと相応しい相手がいるって!』


叫ぶ私に母は涙目で言った。


『雨宮家で決めたことらしいわ』
『だからって、なんでこの歳で結婚なんて?それに好きでもない人と結婚なんて……』
『お父さん達も初めは反対したんだ。でも、この結婚にはうちだけではなく、多くの人間の将来がかかっている。お父さんの会社が倒産すれば何千人という人達がリストラされ、景気が悪化することも考えられるんだ』

そう言われてハッとする。
両親を見つめるとその顔には焦燥感があり、二人も辛かったのではと思った。
こんなことになるなんて。
ガックリと肩を落とす私に二人は土下座した。


『ごめんね。ごめんなさい、真琴』
『すまない。でもお父さん達も辛いんだ』
『許して真琴』
『すまない、真琴』