――トントン
ドアをノックする音。
フローリングに向いていた視線を上げる。
「泉、大丈夫?」
お父さん……
あたしに気を使ってか扉を開けないまま、扉越しに話すお父さんの声は心なしか眠たそうだ。
「大丈夫。ごめん、起こしちゃった?」
「そう?大丈夫ならいいんだ」
部屋の前から遠退いていく足音。
……干渉して来ないけど、心の中では気になっているに違いない。
いつも、お父さんはあたし達のちょっとした変化にすぐ気づいてくれる。
少し敏感すぎる気もするけれど、そんなお父さんがあたしは好きだ。
お母さんを早くに亡くして、精一杯に家事に育児に仕事をこなしていたお父さん。
きっと、あたし達に“不便と思わせないように”と、お父さんは努力していたんだと思う……。
そんなお父さんを身近で見ていたからか。
あまり
心配も苦労もかけたくないのが本音だ。