「はい、到着。」
キキッ、と止められた車はやっぱりそこに着いた。
原田さんが経営するライブハウス“リコール”。
たぶん、暁くんはこれからここでライブをするんだろう。
暁くんのサプライズって、きっとあたしにライブを見せることだったんだね。
でも正直、行きづらい。
だって先週、原田さんに変な態度取っちゃったし、暁くんたちには黙って帰っちゃったし…。
そんなあたしの考えを見透かしたように、暁くんは明るく笑った。
「先週のこと気にしてる?大丈夫だよ、心配しなくても。誰もそんなこと気にしたりしないし、むしろ柚が来てくれたらみんな喜ぶから。」
最後のはきっと暁くんなりの気遣いで言ってくれたんだろうけど、それでもいくらか気持ちが軽くなれた。
「ほら、行こう?」
まるでエスコートするみたいに、すっと差し出された左手。
きっと、この一歩を踏み出せば何かが変わる。
それがいい方向へなのか、悪い方なのかはわからないけれど、
それでも、変わりたいって思えた。
そう思ったらあたしは、暁くんの左手に右手を乗せていた。