樹が押し黙ってしまったのか、自分がそうだったのか、しばらく会話が途絶えた重い空気の中、エンジン音だけが低くうめくようにシートを揺らしていた。


樹はたぶんわかっている。


わたしがイジメられていることも


それを知られたくはないということも――


深く突っ込まないのは、思いやり?


それとも…


「ど、どーだっていいよね。
見ず知らずの中学生が何を悩んでたって、樹には関係ないもんね」


樹にとってわたしは間違って拾ってしまったお荷物で、落とし主に届けたら、あとは一生会うこともないただの子供だ。


樹がくれた質問を自分からかわしたくせに、薄いリアクションが淋しくて、ひねくれた言葉を投げてしまう。