ケータイをカチカチさせながら口を尖らせる遥。きっと女とメールでもしているのだろう。
「まだ根に持ってんの、遥」
「当たり前だろ。あんな地獄……思い出しただけで鳥肌立つわ」
……話がよくわからない。
まあいいや、と立ち上がると俺は泉の方に歩いて行った。
「泉、ちょっと付き合え……」
「お、おう……?」
泉を呼んで、廊下に出る。
首を回しながら
〝なんで俺がこんなこと…〟
と思った。
「なに?」
「や、別に……」
「は?」
「大変そうだったから」
助けた。
とは、言わなかった。
泉の顔を見ると何故か固まっていて。固まっているかと思ったら次は目をパチクリさせて……
「あ、ありがとう」
と、微妙に顔を赤らめていた。