それを聞いた泉は、もとからパッチリした目を見開いた。
すぐ近くで咲いている桜の木が風で揺れる。
「お前等、たぶん、いくらヤり合っても勝負つかねぇよ。見てて思った」
「俺もそう思う。泉も〝桜〟に―――」
「ーーいや、お断りするよ」
雅の言葉を遮るように言った泉は、更に言葉を重ねた。
「仲間とかダチとか……正直めんどうだし。俺は一人で行動させてもらう」
さっき見せた無邪気な笑顔はどこへやら。
ポーカーフェイスに戻った泉。
「じゃあね」
ニヤっと笑いながら手を挙げて去って行った。
その泉の背中から哀愁がただよっていたのは気のせいだろうか。
ーーひらり、ひらり。
桜の花びらが舞い散った。