電車から降りて、改札口を出る。

そこでふと気付く。

「ん…?今更だけどさ、家って、流石に行けなくねぇか?」

分かることは墨並市に住んでいる、ということぐらいだ。

「だぁーいじょうぶ。考えてるって」
気楽そうに答える水貴。
「ネットとか使えば、ある程度の場所は判るだろうかもしれないけどな。家まで押しかけたりはしねーって。」マスコミとか居そうだし、と言いながらニッと笑う。

「多分アイツは、第一発見者として事情聴取、もとい取り調べでも受け終わったぐらいだろう。じゃあ、墨並市区で一番近い警察署を探せばいい。ルートも調べたし」
そう言って、俺の顔の前に携帯を押し付けてきた。

…さっき携帯をいじっていたのは、その為だったのか。

「お前、そういうのは頭の回転速いな」少し感心した。
「誉めるなよ、図に乗るだろ。…あ、次の信号渡って右な」

その後、暫くは会話も無く黙って水貴の後ろをついていった。
その間も、水貴はいつもと変わらない表情で歩いている。
…コイツは普段、何を考えてるんだろうな。
いつもどこか違うところを見ている水貴の横顔。
顔は悪くない、よりも結構顔は良い方だ。
女癖をなおせば良いのに。
「水貴。やっぱお前、その女たらしをなおした方が良いと思うぞ」
「あー?」
「あと身長伸びるとういな」「ほっとけ」
即答で返された。