煙草を地面に落とし、踏みつけたその時。 ビューっと強い風が吹き抜ける。 桜の木が大きく揺れ、花びらが散った。 ――ひらり、ひらり。 そのまま、その風は上手く彼女のフードをさらって顔を露(あらわ)にした。 彼女の顔。それは俺が今まで出会ってきた女の中でも一番美しく華麗に俺には見えた。 ーードキンッ。 風がやみ、バサバサッと肩に落ちた綺麗な蜂蜜色の髪や。彼女の綺麗な瞳から。 ───…俺は、目が離せなかった。