「あー……やっぱりあんまりないかなぁ。昨日買い物しとけばよかった」

 ガランとしているコーナーを見て、ナツが残念そうに、ちょっと悔しそうに言った。


 ポツポツと残ってる肉のトレイを見て、考えている。


「何かナツ、主婦みたい」

 俺は思ったままの感想を言った。


「えっ……それっておばさんくさいってこと?」

 かなりショックを受けたみたいに、ナツは言った。


「ううん。新妻っぽいってこと。ナツっていい奥さんになりそうだよな」


 そう言うと、ナツは赤くなった。


「なっ何言ってんのっ。……それよりどうしよっか、晩ご飯」

 明らかに誤魔化そうとする様子でナツは言った。


 バレバレな感じが何か可愛い!


「豚挽き肉と鶏挽き肉ぐらいしかないなぁ。合い挽きがあればハンバーグでもできるけど……」


「そうだなぁ……」

 可愛い奥さんのナツを見ながら、俺は相づちを打った。


 ふと、見てみると、隅の方に餃子の皮のパックが置いてあった。


「ナツ。餃子は? 餃子って豚だよな?」

 餃子の皮を見せながら、ナツに言った。


「え……うん。そうだけど」

「じゃ、餃子にしよ。餃子パーティー!」

 思いついたままに、俺は提案した。


 そう考えると、すごく餃子が食べたくなってきた。


「……いいの? 包むのとか時間かかるし、遅くなっちゃうよ?」

 ナツは、微妙な表情になって言った。


「いいよ。俺も手伝うし。あ、もしかしてナツは嫌?」


「嫌ってわけじゃ……その、餃子でもいいんだけど……」


「何?」


 俺が聞くと、ナツは物凄く真剣な顔になって、俺を見上げた。


「その……にんにく抜きでいい? 臭い、きつくなっちゃうから」


 その表情で何を言うのかと思ったら、そんなことだった。


 いや、女の人にとっては『そんなこと』ではないか。俺は別に気にしないけど……どうせ同じもん食うんだし……


 あ、でも、今日は初泊まりだし、やめといった方がいいかな。にんにく臭さでムード壊したくないし。

 ていうか、俺がナツに臭いって思われたくないし。