「ていうか、行きたくないのに専門行ったって、金が勿体無いだけだってことですって」

 俺は無理矢理フォローを入れて担任を誤魔化そうとする。

 親にもこう言ったら納得された、いわば切り札だ。


「……じゃあ、沖田。お前は本っ当にそれでいいんだな?」

 念押しするように担任は言った。

 やっぱり、経済的なことを言われたら何も言えないらしい。


「はい」


「……ったく、お前は一年間で進路を変えすぎだ。春の進路希望では専門学校。夏前にいきなり大学受験するとか言い出したかと思ったら、今度は就職。俺が受け持った生徒の中でそこまで変えたやつは沖田が初めてだよ」

 元担任がため息をついている。


「んじゃ、センセ。もう帰っていいってこと?つうか帰ります」

 俺は鞄を持って椅子を立ち上がった。


「………じゃあとりあえず、就職決まったら連絡しろよ。進路調査に必要なんだか――」


「さいならー」


「おい! 人の話を聞けー!」

 なんか喚いてる担任の声なんて、俺には聞こえてなかった。




「あ、旬。やっと解放されたかー」


「クラスの打ち上げ、六時からカラオケだってよ」

 廊下で同じクラスのダチが俺に声をかけてきた。


「俺、パス! 予定あるから」

 俺は迷うことなく断った。


「え、来ねえの? 珍し」


「バイトでも入っちまったのか?」

 二人とも不思議そうに俺を見る。

 確かに、俺はいっつも行事の打ち上げとか、クラスの集まりには参加してたから、最後で最初の、不参加だった。


「バイトじゃないけど、ちょっとヤボ用! んじゃな!」

 そう言って俺は軽く走って最後の学校を後にした。