「将来の夢、決まったか?」
「へ?」
洗濯機を回して、長い髪をシュシュでまとめる。コーヒーを入れて、テーブルに置くと聡ちゃんから不意にそんな質問を投げかけられた。
「あたしの夢は貧乏でもいいから聡ちゃんと幸せに暮らすこと」
「バーカ。そうじゃなくて、進路だよ」
進路……うーん。安定したお給料をもらえるならどこでもいいんだけど。
「進学は考えてないのか?」
「うん」
「本音を言えよ?」
「本当だよ! あたしは高校を卒業したら就職するの!」
あたしがキッパリと言うと、聡ちゃんはコーヒーに手を伸ばした。
「卒業……うん、高校だけは卒業しろ。約束な」
「聡ちゃん?」
やっぱり変。おかしい。バカなあたしでも分かるよ。
「ねぇ、聡ちゃん……」
「ラミカ」
テーブルに置いたあたしの手の上に重ねられた聡ちゃんの手。
大きくて、温かくて、優しい手。