それで今日が約束の土曜日。

 十時にここって約束だったけど……俺はまたしても早く来すぎてしまった。

 だって早くナツに会いたいし! (俺だけ早く来てもしょうがないって分かってるけど!)


 でも流石に九時に着いたのは早すぎた。

 時計を見ると、今、やっと四十五分。



「旬君っ」

 俺を呼ぶ声が聞こえた。


 この声は……!


 声がした方を向くと、思った通り、ナツが小走りでこっちにやって来た。


「ナツ! おはよ!」

 ナツを見ただけで俺のテンションは上がった。


「ごめんっ……遅れちゃった? 約束、十時だと思ってたんだけど……」

 ナツは慌てた様子でそう言った。


「え……? ああ、違うよ。俺が早く来すぎただけ。ナツは時間より早く来てくれたんだよ」


「なんだ……そうなの……」

 ナツはほっとしたように言った。


 ちょっと勘違いしちゃったナツが可愛い!


 ていうか、今日のナツ、前に会った時とちょっと違う。


 この間会った時は、背中までの長さの髪はまっすぐだったけど、今日は少し巻いてある。それに化粧も、瞼の辺りとかがピンク色で、前と違うのはすぐ分かった。

 服も、この前はシンプルなデザインで『キレイなOLさん』って感じだったけど、今日は、ふわっとしてるスカートとか、キラキラ光るネックレスをしてるとことか、ちょっと雰囲気が違った。

 今日は『可愛くてキレイな女の人』って雰囲気だった。


「ナツ……すっげー可愛い……」

 ほぼ無意識に俺は言っていた。


「えっ……」


「髪巻いてる? 化粧も前と違う?」


「あ……うん。今日は休みの日だから、ちょっとね」


「すっげー似合う!」


 勿論、今日のナツの格好がそうだけど、それよりも、俺と会うのにそうやっていつもよりお洒落したのかなって思うと、すごく嬉しかった。


「あ…ありがとう」

 ナツはほんの少し頬を赤くして、恥ずかしそうに俯いてそう言った。