「瑠香には…紫紀のような人間が必要よ。
かつて私に紫紀が必要だったように。」

「もう必要じゃないのか?」

「ええ。
もう…欲しいものは全て手に入ったもの。」

「…そうか…。」

「でも、きっとまだまだよ、あの二人。」

「え?」

「紫紀は…私が死んでしまったことでやっぱりどこか…誰かを愛するのを怖がっている節があるし、瑠香は瑠香で素直じゃないしね。」

「言えてる。」

「でも瑠香は…紫紀のそばにいればいつか必ず…本物の愛を知るわ。きっと。」

「悲しくなったら俺が慰めてやるよ。」

「いいわよ別に。
それに…別に私は悲しくなったりしないわ。」

「そうかぁ…?」

「紫紀が前を見て進むことは悪いことじゃない。
紫紀の人生に、今の紫紀が大切だと思う人が寄り添うことは…とても幸せなことよ。
今までずっと…辛い想いをしてきた分だけ、紫紀には幸せになる義務がある。」

「権利じゃなくて義務か…。」

「もちろん。
本当は私が寄り添いたかったと思う気持ちは…嘘じゃないわ。
でも…叶わない願いは持っても虚しくなるだけよ。
だったら私は…紫紀の笑顔を見ていたい。」


口にした言葉は全て真実。
だけど切なさも少しだけ混じってる。