『じゃあねっ。また明日ね』

と電話の最後にお決まりで毎回
こう言う。・・・けど


なかなか“バイバイ”
が言えずに電話を切れない

本当はずっと話していたい。
祐也の声をずっと聞いていたくて
電話を切った後の

-プーップーッウ-
って音を聞きたくない。


「せーのって言ったらおまえ
から電話切れよ!」

『・・・うん』


「じゃあなっ。せーの!」


『・・・いやだっ。やっぱいや』

こんな事を毎日何度も繰り返す。

だって切れないよ。切った瞬間に
祐也の声が聞けないなんて突然
寂しくなる。なぜか悲しくなる。


夢から覚めて急に現実に放り
出されたような気持ちになる。


この瞬間が莉亜はたまらなく
嫌だった。


でも祐也の電話口で
“いつまで電話してんの!
早く切りなさいよ”

と祐也の母親の声を聞くと
さすがに切らなきゃならない。


そんな時は惜しみないけど
『いっせいの〜で』


って二人で同時に電話を切る。
この半年が毎日夢のようだった。

好きな人に”好き”って素直に
言えて、その好きな人から本気で
“好き”っていってもらえる

ごく普通の事が莉亜を救って
くれた。