山陽インターを降り、山あいの道を駆け上がる。眼下に望む光景は惨たるものだった。

 田園地帯のさらに向こう。おそらくは都市部を直撃した隕石は目に見える範囲をすべて土煙に包み、所々で火柱を上げている。舞い上がった塵灰が収まれば巨大なクレーターが出来ていることだろう。

 いったい何十万人の人が命を奪われただろうか。

 しかしその何十万人よりも俺にとっては一人の命の方が大切なのだ。

 目の前に迫るカーブに目を戻し意識を切り替える。車体を深く傾け、アクセルを開く。山間にこじんまりと佇む小さな町が姿を現わし、数カ所で煙が上がっているのが見える。


 大地震に匹敵する揺れはこの村も襲ったのだろう。失火があっても不思議ではなかった。

 突然エンジンが咳き込み出した。

(ガス欠かよ)

 予備のタンクへ切り替えるコックを捻り、周囲を見渡してスタンドを探す。運良く二百メートルほど先の交差点に赤い看板を見つけ、車体を滑り込ませた。