「平和だねー」


『平和ですねぇ〜』


縁側に並んで腰掛ける私と虎太くん。ぽかぽかと日向ぼっこをしながら、雲ひとつない青い空を見上げた。

…私がこの世界に来て、約二週間が経った。夜が来るたびに月を観察してきたが、ようやく三日月から満ち始めたらしい。今日が、大体の折り返し地点のようだ。

月派と戦う日々が続いていたが、最近は大きな争いもなく、伊織も屋敷で過ごしている。私の隣で、すぴぃー、と気持ち良さそうな寝息をたてる千鶴を見てもわかるが、まさに“平和”だ。

その時、お盆を手にした伊織が廊下の向こうからやって来た。


「華さん。茶菓子でもいかがですか?」


「わぁ、ありがとう…!」


千鶴をぐい、と押して伊織の座る場所を開けた私に笑う彼。伊織は、離れで話したあの夜から、飾らない笑顔を私に見せるようになった。

隣に座った伊織に、私は声をかける。


「最近はずっと屋敷にいるんだね。地方での仕事はもうないの?」


「はい。目立った戦の話は聞きませんから。」


「確かに、月派も最近見ないもんね。」