「華。ごめん、別れよう。」


そう切り出されたのは、つい10分前。

彼が、私と目も合わせずにそう言った。

私はただ目を見開くばかりで、彼を引き止める言葉も出ない。


(付き合って1年…最後って、こんなに呆気ないんだ。)


───私の名前は、藤堂 華(とうどう はな)。歳は二十五。性別は女。

大学で知り合った同い年の彼氏とは、仕事の忙しさを理由にすれ違う毎日。

看護師として働く私は夜勤も多く、職場を出た朝方は、彼のことを思って連絡を控えていた。

“会える時間は少なくなっても、気持ちは変わってない”…そう思っていたはずなのに。

彼の部署に美人の後輩が入ってきた、と彼の同僚である友人の噂を聞いた途端、これである。


「はぁ…。…私、なんであの人のこと好きだったんだろ。」


急に冷めた恋心は、まるで重い鉛だ。

歩くたび、ズシリズシリと体にのしかかる。

…年下の可愛い女の子に、こうも簡単に取られるとは。

自分って、そんなに魅力なかったっけ。これでも、精一杯尽くしてきたはずなのに。