「神崎、あーやーな!!」
「んー…朝からうるさい…ってうわあっ!?」
ばっと跳ね起きると、私の目の前にいたのは親ではなく。
「なんで翔がいるの!?!?」
幼馴染で隣の家に住む翔。
彼とはずっと一緒に過ごしてきたから
、そこまで違和感じゃないけど…。
中学校に入ってからほとんど関わりがなくなっていたから、ビックリした。
「何でって…お前が起きないからだ」
「え…?」
恐る恐る時計を見上げる。
まさか、…。
「7時…まだ、平気だ…。」
安堵を隠しきれず、私はもう一度ベットに倒れ込む。
すると、目の前にスマホを突きつけられた。
「ん…!?」
そのディスプレイに表示された時間は…。
「は、8時ぃぃぃいいい!?」
もうとっくに家を出ていなければならない時間。
なんでこんなに時間が違うの!?
「お前の部屋の時計、ズレてる。」
「えっ…。」
ピンと伸びた指が、私の後ろの時計を指す。
「1時間くらい、狂ってる。」
「えええええええええええええぇぇ」
ベッドから飛び降りて、私は制服を手に取る。
「ほら、翔は出た出た!」
「はぁ?」
「はぁ、って!女子が着替えるのに部屋にいるとかありえないから!早く!」
半強制的に追い出した後、私はブラウスに袖を通した。
「何でそんなにズレてるの?」
ブツブツと呟きながら、私は自分のスマホを手に取る。
「…!」
ディスプレイを見た瞬間、私はドアを大きく開け放して叫んだ。
「かーけーるー!!!!!」
しかし、家の中からは反応がない。
「くっ…」
騙されたことに気づいてなお、私は少し急ぎ気味に動いていた。
パタパタと1階に降り、机にスマホを乗せる。すると、その時。
机の上に置かれた紙が目に入る。
「…翔から?」
2つ折りになっているその手紙。
そっと開いてみると、そこには見慣れた彼の字が並んでいた。

【彩奈、まんまと騙されたな。笑
そんなに遅いわけねーじゃん。今はまだ7時。大丈夫だよ。お前の親達は、もう仕事に行くって言ってたから、遅れずに学校来いよ!】

それを読んで、私は大きくため息をついた。
「イタズラにも度があるよ。」
でも、そのおかげというべきか、寝坊はしなかった。
それに免じて、今回は許してあげよう…。
それに、翔に久しぶりにイタズラされて、ちょっと嬉しかったから。
幼馴染でも、学年が変わるとだんだん関わりが無くなってたから。
それに…
彼から話しかけてくれるなんて珍しい。
最近避けられてると思ってたのに、何かあったのかな?
それとも…。