階段から落ちて、意識を失った後。
次に起きた時に見たのは会社でもなく、自分の部屋でもなく、見慣れない白い天井に、薄いクリーム色のカーテン。

「目が覚めたのね!莉々花、私のこと分かる?」
「有希子が付いててくれたのね?仕事中にごめんね」

そう言うと

「そんなことは良いのよ!見つけた時には頭から血を流して倒れてて、呼吸も脈もあっても声掛けに反応せず、起きないから心配したわ!」
「ごめんね、心配かけて。私も突然だったから」

そう答えると

「あんたが自分で落ちたわけじゃないでしょう?謝らなくていいわ。それで、何があったの?」
『身の程知らずのあなたが悪いのよ』

突き落とされる時に、言われた言葉を私が口にすると

「なに、その言葉。完璧に思い違いも甚だしい、嫉妬に狂った馬鹿ね」

そう言い切る有希子の顔は苦虫噛み潰したよう。
かなり怒ってる。
目力美人が怒ると迫力増して怖いわ。

「相手の顔は?見たの?」

もっともなその確認に、私は首を小さく横に振る。

「後ろ姿しか。ただ、相手は女性。最近聞いたことのある声してた」
「それ、莉々花には相手に心当たりがあるってこと?」

有希子さんよ、顔がもはや般若に…
私にその感情の矛先が向いて無いのは分かっているけど。
この絶対零度のお顔は心臓に悪い。

「とりあえず、起きたことをナースコールで知らせてて。私は副社長に電話してくるから」

そう言って病室を出ってった有希子。
忙しいのに、迷惑かけちゃったな。