環くんに話を頂いてから3日後、あたしは早くも例の寮へと向かうことになった。

本当に切羽詰まっていたらしく、本来受けるはずの面接などをすっ飛ばし、とにかく働いてみてくれというわけらしい。
高校生の一声で採用されるくらいだもん、よっぽど切実だったんだろうな。

次の月曜がちょうど月初めになるから、正式に働き始めるのはそこから。
その前に手続きや簡単な案内をしたいからと学校側から申し出があったらしく、何日かぶりにスーツを着込んでいざ出陣。

思ったよりも交通量は少なく、スムーズにここまでたどり着くことが出来た。
実家からだと、およそ1時間弱ってとこか。

それにしても――

都会の喧騒から少し離れた郊外にある、篠生総合大学。
ここに通う人たちは、在学中に全ての棟の床を踏むことは出来るんだろうか?

そんなどうでも良い疑問が浮かぶほど、いくつもの棟がそびえつ敷地内に設立されたのが、環くんの通う篠生大付属高校だ。
大学とほぼ連動するように様々な科を設けられ、創立当初は相当話題に上ったらしい。

ちょうど私が受験の年で、もう少し完成が早ければと残念がっていた生徒もちらほらいた記憶がある。
目指す将来が決まってる子なら、高校のうちから専門的に学べるのは強みだもんね。