じっとしていると、さっきの潤くんと女の先輩のことが自然と思いだされて、つらい。
 なかったことになればいいのに、と唇をかみしめる。

 あんなふうになるのなら、なんでもいいから声かけとくんだった。
 もし過去に戻れるのなら、私はあとさき考えずに大声で呼ぶ。
 名前を呼んであげる。
 ほかに目移りしないように。


 ――本気で好きだったのなら、その気持ちに、自分に、自信持てばいい。

 そんなの難しいよ。

 潤くんは私のことが好きなんだと思ってた。
 言葉にしてはっきり言われたわけじゃない。
 周りの雑音を間に受けたわけでもない。
 けど、私にむけられる視線はときどきすごく優しかったから。
 だから私、安心してた。
 気持ちの確認なんかしなくても、不安になんかならなかった。

 事が起こってはじめて気づいた。
 私は潤くんの行動にあれこれ言える立場だったの?

 自信がない。
 潤くんに『嫌い』と言った私は、昨日までの私じゃない。
 嫌いだなんて思ったことなかったのに。
 潤くんのこともそうだけど、私は自分さえ信じられなくなってる。
 確かなことって、なにひとつないの?