三学期がはじまった。
 いつのまにか『公認のふたり』というやつになっていた。
 潤くんと私のことだ。
 噂ってものがいかに面倒くさいか、知っているつもりだったけど。
 相手にもよるんだね。
 実は、けっこう気持ちよかったりする。


「もとはといえば、早智子ちゃんが原因なんだよっ」

 部室で英語の宿題をしながら、未歩が言う。
「早智子ちゃんが川崎くんのこと、潤くんって呼ぶでしょっ? コレキヨ君は別だけど、他の男子のことは名字で呼んでいたのに。それって、みんなにはセンセーショナルだったんだよっ」
 秋ちゃんも身を乗りだす。
「そうそう。で、川崎くんが柏さんを『早智』って呼ぶじゃない? まえに赤石くんが川崎くんをまねて、『早智』って言ったんだって。そしたらその場にいた川崎くんが……」

 祐子が続きを言う。
「それはよせ。たとえオレが許しても、早智が許さないぜ。……もっとも、オレも認めないけど」
 私以外の全員がきゃーっと声をあげた。
「かっこいいっ」
 ――っていうか、キザを通りこして、バカよね。

「……いいけどね。川崎くんが言うと、さまになるから」
「そうよね。最近、急にかっこよくなったよね、あの人。まえはもっと地味だったのに」
「みんなが柏さんのこと、うらやましがってるよ。同じクラスの人間としても、鼻が高いし。生徒会長と副会長の組みあわせなんて、出来すぎだけどさ」
「そうそう」
 えらく評判がいいじゃないの。
 私はふと尋ねた。

「ひょっとして、潤くんはもてるの?」