四月の終わりに役員会があった。
 学級委員と各部活の部長、それに生徒会役員が集まって、今年度の予算を審議したり、学校内の問題提起をしたりといった内容だった。
 言わば生徒総会(こっちは生徒全員参加)のための打ちあわせ。
 私は調理部の部長だったけど、学級委員でもあったので、未歩に部のことをまかせ、二年一組の席についた。
              
 会議室――まんなかをあける形で長方形に並べられた長机に座る大半は、三年生。
 一年生は男女のクラス委員が数人、緊張した顔でかしこまっていた。
 去年は私もあんなふうだったな、とほほえましく思っているうちに、部の予算が読みあげられていった。

「……以上ですが、なにか質問や意見はありませんか? なければ承認とみなします」
 スボーツ刈りの議長がみんなに間いかける。
 このまま何秒か反応がなければ、次の議題に移るはずだった。
 けど、そうはいかなかった。


「調理部の予算、ちょっと高くないか?」
 手元のプリントを見ていた私は、勢いよく顔をあげた。
 なんだろ・・・・・・誰かがうちの部のことを言ってる。
 向かい側の奥の席で、調理部代表として未歩が控えている。
 不安げな表情で、一瞬、私のほうを見た。

「部員が六人で一万円。しかも、昨年の予算はそっくり今期に繰り越し・・・・・・実質二万四千円の部費じゃないか。これだったら、繰り越しぶんだけでも充分だろう?」 
 発言したのは、柔道部だか相撲部だか、体格のいい三年生。
 なるほど、考えた物言いをしている。
 そのわりには、口元に品のない笑みを浮かべている。
 ――嫌な感じの人だ。
 未歩、だいじょうぶかな?