進藤さんからのお呼び出しが来たのはそれから三日後だった。

「今日仕事が終わったら連絡すること」と簡潔なメールが入り、仕事を終えて連絡するとすでにクリニックの近くのカフェにいるという。
慌ててカフェに飛び込むと、優雅にコーヒーを飲みながら読書をしている進藤さんがいた。

「進藤さん」
向かいの席に座ると
「早かったな」と余裕の表情で笑う。

ああ、もう心臓に悪い。
グレーのセーターにジーンズ姿。
読書をしていたからサングラスもしていない。
地味なファッションでもオーラは漏れ出ていて、さっきから店員の女性と奥の席のカップルがこちらを気にしている。

「心臓に悪いんですけど」
「これでも気を遣ったんだけどな。ここはコーヒーが一杯1000円以上もするから女子高生なんかが気軽に入ってくるような店じゃないだろ?落ち着いた雰囲気だし、騒ぐような客もいない」

そういわれればそうかも。

ん?でも、待って。

「よくこのお店をご存知でしたね。ここは宣伝もしてないし、そんなに有名って程じゃないと思うんですけど」

「ああ、木下先生が教えてくれた。ここなら果菜と待ち合わせができるってね」

ニヤリとする進藤さんだけど、背後に木下先生がいたとは。あ、違う、さらにその後ろに美知子さんがいるんだ。
彼女の顔がパッと浮かんできた。