「……寝坊した」


あれから、気づいたら家に帰ってベッドで眠りについていた。

わずかな隙間から見えた2人の姿が
嫌でも頭の中に残っていて、消えてくれない。


あのあと、わたしは2人がいた場所に戻ることができなかった。

これでもかってくらい走った。

心臓が限界だと悲鳴をあげていても、足を止めることができなかった。


あの光景を忘れたくて、必死で走った。

ただ、視界は溢れて止まらない涙で揺れていた。


正直あのあと、自分がいつ帰ってきて、今この朝を迎えるまで何をしていたのかほとんど記憶がない。


そのせいで、いつもきちんとセットしていたアラームがセットできていなくて、寝坊してしまった。

掛け時計の時間を見れば、確実に遅刻。

そして、スマホには小町からのメッセージ。


『ちょっと、今日球技大会だけどサボるつもり?』


……なんだ、今日授業じゃなくて球技大会だったのか。

もはや、それすら忘れていた。