そんなふうに問いかけられつつも、答えられずに茫然自失な私の部屋に


「ヤダー!!まだ引っ越し作業終わってないわけ?!これじゃ退去確認出来ないじゃないの!」



低いけど綺麗な声なのに話し言葉が女の人というバリバリ違和感を伴う声が響いた。



振り向いた先に居たのは、最近テレビで騒がれる美魔女オネェな人だった。
なぜ、ここに美魔女オネェが居るんだ?
しかし、本物は大きいけど綺麗だななどと思いつつ、突拍子もない人物の出現に、私は現実に帰還する事が出来た。



「すみません、退去確認と言うことは不動産会社の方ですか?」


思わずビクビクしつつ伺うと





「ちっがうわよ!私はここのオーナー!大家!退去確認は大家の仕事なのよ!」


フンって感じで言われる。
怒ってても不機嫌でも美人ってお得だなぁ。


どうもこの美魔女オネェのお陰で現実に帰還したものの、思考はとっ散らかってしまった。



「で?なんで引っ越し作業がストップしてるのよ?」


確認に来たならご尤もな疑問ですね。



「えっと・・・」


どう言ったものかと言葉に詰まると



「簡潔に手っ取り早くサクッと話なさい!私は忙しいのよ!」


言葉はキツイのにその表情は何故か甘く優しい。
目線がいきなり柔らかくなり、その微笑みにオネェな方なのにドキッとした。



「あの、ラジオのニュースで入社予定だった会社が経営破綻、事実上倒産というニュースが流れてきて・・・。会社の寮に入る予定でしたが無理そうで止まってしまって・・・」


そう伝えると



「なら、ご実家にでも帰れば良いじゃない?無職で住む所無いなんて仕方ないでしょ?」



そうサラっと言われた事に私の顔色は悪くなるのを自覚せずには居られなかった。