《萩花side》
次の日の帰りのHR。
授業も先生の声もまったく耳に入ってこず、
今日は一日中ずっと頭の中で昨日の出来事を思い出していた。
───『帰らないならお前を抱く』
昨日の慶さんはどう見てもおかしかった。
ガキだと言っているあたしにキスしてくるし、おまけに抱くまで言い出すんだから。
あれがあたしのファーストキス。
慶さんとできたのは嬉しいけどあんな状況じゃ…ね?
相手が慶さんなら……よかった。
彼のあんな悲しそうな顔を見たくなかったから。
利用されても、何をされても文句はなかった。
好きだから、大好きだから笑っていて欲しい。
彼を笑顔にできるならあたしは何だってする。
でも結局慶さんはまた『ガキだから』という理由であたしを遠ざけた。
おまけに振られちゃうし。
今日の朝だって目も合わせてくれなかったし。
あたしにとっては慶さんは特別でも
慶さんにとってあたしはただのガキんちょでしかないんだろうな。
「はぁ…」
先生にバレないように重いため息をこぼす。