それから、アタシはあなたが預けてくれた傘と一心同体したみたいに一緒に過ごしていた。

 もちろん、貰った記憶はない。
 これはあなたの物だから、いずれ返さなければならない。


 本当は今すぐでも返したいのだけど、あの日以来、あなたに会ってない。


 会いたい、会いたい、会いたい。


 何度も念じた。もしかしたら、あの時が最初で最後だったかもしれない。
 折角会えたのに。


 折角初めて人を好きになったのに。


 アタシは落胆した。
 せめて、何処の誰なのか知っておくべきだった。