「城、お前、ハワイには行かないのか?」


俺が唯一気を許している二人の親友の内の一人が、10月にハワイで結婚式を挙げる。


「俺は嫁さん連れてバカンスを兼ねて行く予定だけど、お前は?
やっぱり行かないか?」


エスカレーター式の学校で育った俺達は、小学部、中学部、高等部、もちろん大学まで一緒だった。
元々、人間に対して何も興味のない俺を、この二人は甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
それは今でも変わらない。
三か月に一度は必ず集まるこの飲み会のルーティンも、俺は食傷気味だけど…


「俺は行かない。
10月は忙しいし、政府主催のイベントを任されてるのも知ってるだろ?」


太一と陽介は、お決まりの俺の文句に顔を見合わて苦笑いをする。


「城、分かってるか…?
来年で俺達は20代を卒業する。
この三人の中で、独身はお前一人になるんだぞ?

そろそろ、まずは彼女から作ってみない?」


これもお決まりのルーティンだ。


「ま、俺達は昔からの付き合いだから、お前のその特殊な性格は知ってるけどさ…
今の会社でも、色々なあだ名をつけられてるんだろ?」


もうすでに二人は笑っている。


「学生の時のあだ名は、まだ可愛かったよな。
城はイケメンだから、そんなへんちくりんなあだ名はなかったけど…
例えば、冷徹王子とか、能面王子とか、まだ王子がついてたけど、けど?」