『まだ駅にいる?』


帰宅ラッシュで人のごった返す駅のホーム。

会社帰りのサラリーマンやOLさん、私と同じ学校帰りの学生たちに溶け込む中、届いたLINEのメッセージに、私は心を弾ませながら返信する。


『いるよ』


短い文字の後ろに笑顔の絵文字をつけて送信ボタンを押せば、私のメッセージの横にはすぐに既読マークが現れた。

その数秒後、また彼からのメッセージが送られてくる。


『みつけた!』


それを見て私はスマホに落としていた視線を上げ、周囲を見渡した。

けれど、私が彼の姿を認めるよりも早く──


「桃原(ももはら)」


彼が、私に声をかけてくれて。


「二ノ宮(にのみや)」


私の隣に、メッセージをくれた本人が微笑みを携えて立った。

彼の笑みに、私も笑顔を返す。

つられたわけじゃない。

二ノ宮が一緒にいることが嬉しくて、自然と笑んでしまうのだ。

彼は……


「1人だろ? 一緒に帰ろう」

「うん」


私の、好きな人だから。