指定日時に届いたメールをもとに某社の電子システムにログインし、合同説明会で再度手渡された資料の通りにフォルダにアクセス。該当ファイルをデスクトップへ貼ってから印刷し、日付、品目、個数、金額を確認。担当者印を押す場所に付箋を貼って印と書き、再確認の意味で私が目を通した項目それぞれにも付箋を貼ってから青のクリアファイルに挟んだ。
 クリアファイルは内容ごとに色分けしてあり、青は作成者にもう一度戻すもの、赤は緊急かつ重要なもの、無色はそれ以外としている。

 瑛主くんに渡すと、赤はともかく、青と無色が混ざって帰ってくることが多かった。整理整頓というものが苦手らしい。チェックしている途中で別件の呼び出しが入り、再開したときに戻すクリアファイルが入れ替わっている、というのがしばしばある。
 あとはフォルダスタンドに放り込んで、いろんな資料に押されてどんどん端に追いやられて……というパターン。


「主任。F社の検収書を郵送したいんですけど、もう目は通しましたか」

 瑛主くんと呼ぶこともあるけど、業務中は極力、谷口主任と呼んでいた。話は簡単、彼のことを瑛主くんと呼ぶ人が他に誰もいないからだ。

「おー、F社。F社。F社の検収書」
 瑛主くん、言いながら思いだそうとしているな。

「たぶんその机の前のフォルダスタンドに、そうです、左端の青いファイルの」
「あった。はい」

 印鑑をもらうだけのお願いでも、私はタイミングを気にするほうだ。外線電話直後や電卓を叩いているときなんかは論外、外出から戻ったときもそれがクレーム処理だった場合は少し時間を置いている。急いで回さないといけない書類のときはそうも言っていられないから、できうる限り申し訳なさそうな声でそっと頼むようにしている。
 今日はそのうちのどれでもなかったので、ごくごくあたりまえの事務対応となった。