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「結局、暁には『守るべきもの』があったってことよね」
結局いつも通り飲み続けている私たちは、時間を忘れて話し続けていた。
もうすぐ二時。
結婚前夜にこれだけ飲み続ける花嫁は、世の中に私くらいなものだろう、と思った。
「どうかな…。そんな大それたことじゃないと思うけど」
「私ならどうしてたかな、って考えたりするよ。近くにいない彼氏より、すぐ傍にいる気心知れた気になる男」
「最低な天秤だね」
「ほんとにね」
自虐的に笑った私を見て、千那は一緒になって笑ってくれた。
その笑顔に、沢山のものを救われた気がした。
実際。
最低な天秤だった、と。
自分でも想う。
明らかに悟が好きだ、と。
そんな態度をしておいて。
涼ちゃんを裏切ることなんて出来ない、と偽善者ぶっていた。
悟に恋をしたのは事実で。
涼ちゃんが大切なのも、また事実。
じゃあ、どちらが大切か?と訊かれたら。
私は迷わずに涼ちゃんを選んでしまうのだろう、と想った。
実際に、それを選択することなんてなかったけれど。
今日まで、私と悟の距離は『仲のいい友人』のままでいる。
そして、もう二度と。
それが変わることはない。
明日がくれば。
私の一番は涼ちゃん以外にいなくなる。
たかが紙切れ一枚の約束でも、今の私には何より必要なものなのだ。
迷わないように。
揺れないように。
そして、愛するために。
「暁」
「ん?」
ワイングラスに口を付け、いい加減帰らないとマズイなと思いながら千那を見る。
その目はあまりに真剣で、少し怖いくらいの顔をした千那に少し怯んだ。
「暁の好きな人は、誰?」