ガヤガヤうるさい朝の教室。


いつものように窓際の一番後ろの席から、チラチラと入口の方を気にしていた。



あー、早く来ないかな。


さっきから落ち着かなくて、ドキドキソワソワ。


そろそろ来てもいい時間なんだけどな。


待ち遠しくて仕方ない。



朝のこの時間が一番好き。


爽やかに教室に入って来る大好きな人の姿を見ると、嫌なことがあっても幸せな気持ちで満たされるから。



高校生活も2年目に入り、1ヶ月ちょっとが経過した。


桜は散ってしまったけど、入学式の時に一目惚れした武富 大成(たけとみ たいせい)君と初めて同じクラスになれたから気分は浮かれたまま。



武富くんは爽やかで、お上品で、気配りが上手で、控えめで。


目立ってるわけじゃないけど、存在感がないわけでもない。


そういう人。


話しかけたりしたいけど、緊張してとてもじゃないけどそんな勇気は出ない。


それに話したこともない私なんかに声をかけられても困るだろうから、いつも見ているだけなんだ。



「咲彩(さあや)、ちーっす」



「あ、虎(とら)ちゃん。おはよう」



ポンと私の肩を叩いたのは、ダルそうにスポーツバッグを抱えた末永 虎(すえなが とら)、通称虎ちゃん。