…藤岡部長に抱き締められてからというもの、私は一段と藤岡部長を避けていた。

それでも、同じ部署で働く以上、顔を合わせないわけには行かない。…頼まれた事は、やらないわけにはいかなかった。

「有藤主任、確認お願いします」

書類を差し出してきたのは、西崎君だった。

「…うん、よく出来てる。間違いもないわ」

「…ありがとうございます。…あの、有藤主任」

「…ん?」

「…この前は、沢山ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

そう言って深々と頭を下げた西崎君。

「もういいよ。私もしっかり確認してなかったのがいけなかったんだし」

そう言って困ったように微笑む。

「いえ、やっぱり、俺が悪いと思うから、今後こんな事がないように気をつけます」

「ええ、お互い気をつけましょうね」

「…はい!…あの、初めて見ました」
「…え?」

「有藤主任の笑顔」
…、笑顔、だった、かな。

「…有藤主任の笑顔が見られるように、俄然、頑張ります!」

あ、え…行ってしまった。