「ほら、早くしないと始まるぞー!!」

陽くんと恵ちゃんが急かすようにテレビの前で手招きをしている。

「はいはい」

俺は冷蔵庫からジュースを取り出しコンビニで買ってきたスナック菓子を抱えると、急いで二人と同じようにテレビの前に座った。

今日は金曜日だ。

普段ならとっくに寝ている時間だが、週末だけは小学生のふたりにも夜更かしが許されている。ちなみにひろむくんは子供部屋で就寝中だ。

「何?映画?」

テレビを食い入るように見つめている二人に、洗濯物を畳んでいた佐藤さんが声を掛ける。

「そうだよ。去年の夏に流行ったやつ。“サマーレイン”」

ピクリとも振り返らない双子の代わりに応えてやる。

“サマーレイン”は昨年、日本の映画賞を総なめにした超話題作である。

それがテレビ放送されるとあって数週間前から、バラエティ番組やスポットCMで宣伝がされていた。

俺も密かに楽しみにしていた。話題になった当初、見に行こうと思って結局行きそびれたからだ。

「私も見ようかな」

そう言うと佐藤さんは洗濯物を脇に置いて、俺の隣に並んだ。

……こうして、総勢4人による映画鑑賞会がスタートしたのだった。