夏、である。青模造紙の青空は、良くできた綿菓子に似た入道雲を浮かべ、黒々とした山肌を額縁にして頭上に展開する。真上から頭頂部を直撃する陽光。
 『イタリア辺りの大聖堂の天上画から、創造主やら天使やら取っ払っちまったら、こんな風になるんじゃないのか?』
 プールサイドの監視用テントの端から空を見上げながら、大学の宗教学の時間に見せられた、かの有名な「天地創造」の絵を思い出す青年、憲治。
 ジーンズの足を、だん、と前に投げ出し、パイプ椅子にもたれかかる。退屈そうにあくびをしながら、前髪の辺りを軽く脱色した頭を掻く。