その日の夜。



「俺?」



「どうしても夜月さんを指名したいって言ってて頼みます」



「何で俺が…北斗とかいるだろ」



「そんな事言われても…」



「あんなケバケバしい女って苦手なんだよな。金は貢いでくれそうだけど」



「そこを何とか!」



最近の夜月は
客を選ぶ様になっていた。



本来ホストは客を選ぶなど
出来ないのだが
今現在は化粧を主張してる女より
ナチュラルメイクの清楚なお嬢様タイプの女が好みらしい。



やはりそれは朱里の事か!?



「どうせ、どっかのホステスだろ見た感じ馬鹿っぽい。全く仕方ねーな」



「じゃ相手してくれるんスか?」



「ああ」



そして
ゆっくりフロアの方に歩いて行き
三番テーブルの前に立つ。



「俺が夜月だ」



相変わらず優しさが感じられない
夜月の接客態度だが
この夜月のクールなキャラが
受ける人には受けるのだ。



「あっ夜月さん!」



「ああ」



ホステスっぽい装いをした女は
笑顔で言う。



「やっぱりあなたが一番カッコイイ。どーぞここに座って下さい」



言われると夜月は
少し距離を置いて座る。
しかし女は近付いて来て夜月と
腕を組みながら喋り出した。



「私、アリスっていうの。よろしくね」



「どっかのクラブのホステスか?」



「アッタリぃ〜ホストクラブ色々見てきたけど、この店が一番レベルが高いね。特にあなたが素敵」



アリスは夜月の事を
気に入った様だが当の本人は
完全に白けている。