ガタガタ、ゴトン。

深い眠りに堕ちかけた身体が、傾いた拍子で手摺に頭を打ちそうになり、慌てて首を振って目を覚ました。

通勤ラッシュを過ぎ、時間は午前9時半。

今乗っている各駅停車に、これから会社に向かう人なんて、殆んど居ないだろう。

台風一過のような静かな車内は、僕の嫌いな雑音が少なく、穏やかな気持ちで仕事へ向かえる。

ただ、少ないというだけで、たまに居る大声で携帯を使用する人や、大音量で音楽を聞く若者達は、正直耳障りだ。

何度か注意した事もあるが、僕が障害者だと分かると、心にも無い暴言を吐く人もいた。

それが嫌で、今ではそういう人と遭遇しても、やり過ごす事にしている。

まぁそんな輩と会わず、昨日は遅くまで起きていたのもあって、電車の揺かごは絶大な効果を発揮したようだ。

窓から射し込む光は顔を照らし、温かさでまた睡魔に襲われそうになるが、軽く擦って脳に覚醒を促す。

夢を見ていたみたいだ。

懐かしい夢……見なくても鮮明に思い出す事が出来る思い出。

あれが、妹との最後の会話だった。

朝は始まったばかりだというのに、いきなり憂鬱になってしまった。

これから仕事なのだ、頑張らねばと、無理矢理自分に気合いを入れる。