残暑が厳しい夏休みも残すところわずかな、8月の終わり。


うるさい蝉の鳴き声が減り、夜になると鈴虫の鳴き声が、どこからか響く。



ちょうど……そんな頃。



俺は、人生の岐路ってのに立っていた。





「なんて喜ばしい、お話なのかしら♪ ね、陽呂?」

「え? あ……うん?」


誕生日を明後日に控えた俺の横には、素晴らしいプレゼントだって喜ぶ親。


前には、プレゼントになるらしい……



江田 心菜(エダ ココナ) 17歳



そして……後2日で18歳になる俺、川合 陽呂(カワイ ヒロ)



ちょうど今!
婚約が決まったり……したりして。



俺ん家は、代々江田家に仕えてた使用人。


仕事は、護衛……ボディガードってのをしてたらしいけど。


実際は、じぃちゃんの代まで。

親父は、しなくていーのに立候補したらしい(ただのバカだ)



でも、俺は自由気ままな生活をしてた……。

訳でもない。



熱血親父が、

『お前も江田家に尽くしなさい!』

とか意味不明な事を、物心がついた時から繰り返し言われ続けてた。



だから、選ぶ権利などなく幼稚園から、心菜と同じ学校。

勿論、心菜の護衛を見よう見まねでしてきたんだ。


特別何かを習ったわけでもないし。
習おうと思った事もない。


ただ、ガキの頃から、心菜を1人にさせない。

コレだけをずっと守ってきた。



そして今日……婚約まで決まった。



ちなみに俺と心菜はデキてない。

親の勝手。

理由は、『昔から決めてた』とかナメた理由だった。